
検査は「診断のため」ではなく、「理解のため」にある
(※この導入部は前回と同趣旨のため簡潔にしています)
検査とは、子どもを評価するためのものではありません。
**その子の理解の仕方・学び方・つまずき方を知るための“道具”**です。
特性のあるお子さんにとって、
「なぜできないのか」ではなく
「どうすればできるのか」
を考えるための出発点になるのが、検査です。
検査を受けるべき年齢の考え方
(※年齢別の考え方は前回内容を踏襲)
重要なのは、
年齢で機械的に決めるのではなく、困り感の内容に応じて検査を選ぶことです。
-
未就学期:発達全体のバランスを見る
-
小学校期:学習や認知特性を見る
-
思春期以降:自己理解・二次障害予防の視点を含める
そのため、**「どの検査を選ぶか」**が非常に重要になります。
主な検査法の種類と特徴
ここからが、今回もっとも大切なポイントです。
日本で実際に多く使われている検査を、目的別に整理します。
① 田中ビネー知能検査(田中ビネーV)
田中ビネー知能検査は、
日本で長年使われてきた代表的な知能検査です。
特徴
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年齢尺度を重視した構成
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1対1で行う個別検査
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「知能年齢(MA)」と「IQ」が算出される
向いている年齢
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幼児〜学童期
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発達の遅れが疑われる場合
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全体的な知的水準を把握したい場合
メリット
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直感的に理解しやすい
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知的障害の有無や程度の判断に用いられることが多い
注意点
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凹凸(得意・不得意の差)はWISCほど詳しく出ない
-
学習支援の具体策を立てるには情報がやや粗い場合もある
👉 「知能全体の水準」を把握する検査と考えると分かりやすいでしょう。
② WISC(ウィスク)知能検査(WISC-V)
WISCは、現在の教育・支援現場で最も活用されている知能検査です。
特徴
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言語理解
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視空間
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流動性推理
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ワーキングメモリ
-
処理速度
という5つの認知指標から構成されます。
向いている年齢
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小学生〜高校生
-
学習につまずきが見られる場合
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発達障害(ASD・ADHD・LD)を疑う場合
最大の強み
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認知の凹凸が非常に明確に分かる
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学習方法・環境調整に直結しやすい
スプラウツでは、
**「支援につなげる検査」**として、WISCの結果を重視する場面が多くあります。
③ WPPSI(ウィプシー)知能検査
WPPSIは、WISCの未就学児版にあたる検査です。
向いている年齢
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2歳半〜7歳程度
特徴
-
遊びに近い課題構成
-
幼児期の認知発達の特徴が分かる
ただし、結果は成長によって変化しやすいため、
「固定的に捉えない姿勢」がとても重要です。
④ 発達検査(新版K式発達検査など)
発達検査は、
知能というより「発達のバランス」を見る検査です。
評価される領域
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姿勢・運動
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認知・適応
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言語・社会
向いているケース
-
未就学児
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発達の偏りが気になる場合
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医療・療育機関での初期評価
田中ビネーやWISCと併用されることも多い検査です。
⑤ 行動・特性評価(質問紙検査)
ASDやADHDの特性を把握するために、
保護者・教師が回答する質問紙検査があります。
例
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SDQ
-
Conners
-
ASSQ など
これらは
診断補助・特性理解のための材料であり、
単独で判断するものではありません。
検査は「受けた後」が本番です
どの検査にも、
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得意なこと
-
苦手なこと
-
限界
があります。
大切なのは、
結果をどう読み、どう日常に落とし込むかです。
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家庭での声かけ
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学校・フリースクールでの配慮
-
本人への伝え方
ここまで含めて初めて、検査は意味を持ちます。
スプラウツでは、
検査結果を「評価表」で終わらせず、
その子の学びと生活に翻訳することを大切にしています。
最後に ― 検査は「可能性を測るもの」ではない
検査は、
子どもの限界を決めるものではありません。
むしろ、
「この子が伸びやすい道」を照らすためのものです。
迷いがあるときこそ、
正しい検査を、正しい視点で活用することが、
子どもと家庭を守る力になります。
🌱
by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所/聡生館&Sprouts フリースクール代表)
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