フリースクール・スプラウツには、
さまざまな背景を持つ子どもたちが通ってきます。
学校に行けなくなった子、
教室に入ろうとすると体が動かなくなる子、
学習以前に、心が疲れ切ってしまった子。
そうした子どもたちと日々関わる中で、
私たちは何度も同じ問いに立ち返ります。
「学びとは、いったい何なのか」
「人は、どこから学び直せるのか」
スプラウツが大切にしている答えは、とてもシンプルです。
学びとは、
成果を急ぐことでも、
人と比べることでもなく、
まず“種をまくこと”から始まるという考え方です。
学びが止まってしまう理由
学習につまずいた子どもたちの多くは、
能力が足りないわけではありません。
・理解が追いつく前に先へ進んでしまった
・間違えることを強く恐れるようになった
・「できない自分」を否定され続けた
こうした経験が積み重なり、
学びそのものが危険なものとして記憶されてしまった結果、
心と体がブレーキをかけているのです。
この状態で
「やる気を出そう」
「頑張ればできる」
と声をかけても、状況は改善しません。
まず必要なのは、
安心して“種をまける環境”を取り戻すことです。
未就学児期〜小学生低学年
学びの「土壌」を整える時期
この時期に最も重要なのは、
知識の量ではありません。
・話を最後まで聞いてもらえる
・失敗しても責められない
・分からなくても受け入れてもらえる
こうした経験が、
学びの土壌になります。
スプラウツでは、
「できる・できない」を評価する前に、
安心して関われる関係性を何より重視します。
学習の種は、
短時間で終わるもの、
繰り返し取り組めるものが適しています。
「今日はこれだけできた」
その積み重ねが、
学びへの信頼を少しずつ回復させていきます。
小学生中学年
「分からない」を許される経験
学習内容が抽象的になり始めるこの時期、
多くの子どもが「分からない」を抱えます。
しかし、
分からないことを口にできず、
そのまま置き去りにしてしまうと、
学びは一気に苦しいものになります。
スプラウツでは、
・分からないと言っても否定されない
・間違えた理由を一緒に考える
・理解できるところまで戻る
こうした関わりを通して、
学び直す感覚を育てます。
分からないことは、失敗ではありません。
次の一歩のための、大切な手がかりです。
小学生高学年
自分で立て直す力を育てる
高学年になると、
少しずつ「自分で考える力」が育ってきます。
この時期に大切なのは、
完璧な成功体験ではなく、
失敗しても立て直せる経験です。
・少し難しい課題に挑戦する
・途中でうまくいかなくてもやり直す
・計画を立てて実行する
こうした経験は、
中学以降の学びを支える
折れにくい心を育てます。
フリースクールだからできること
スプラウツは、
「勉強をさせる場所」ではありません。
子ども一人ひとりの状態に合わせて、
学びの“種”を一緒に探し、
無理のない深さで、静かにまいていく場所です。
種は、すぐには芽を出しません。
けれど、
正しい環境で、適切な関わりがあれば、
必ず育ち始めます。
まとめ｜学びは、何度でも始められる
学びが止まったように見えるとき、
それは終わりではありません。
ただ、
次の種をまく準備期間に入っているだけです。
焦らなくて大丈夫です。
比べなくて大丈夫です。
今日、ほんの小さな一粒を。
そこから、学びは必ず動き出します。
🌱
by Dr. Kazushige.O
（一般社団法人 自在能力開発研究所 代表理事／
聡生館＆フリースクール Sprouts 代表）
