
「何度注意しても字が雑で……」
「でも、テスト前や先生の前では、きれいに書けるんです」
これは、スプラウツの現場でも、保護者の方から非常によく寄せられるご相談です。
一見すると「やる気がない」「手を抜いている」ように見えてしまうこの行動ですが、
脳科学と発達の視点から見ると、まったく違う理由が見えてきます。
結論から言えば、
これは性格や怠慢の問題ではありません。
脳のエネルギー配分と注意の使い方の問題です。
字を書くという行為は、脳にとってとても高度な作業です
私たちは普段、無意識に文字を書いていますが、
子どもにとって「字をきれいに書く」という行為は、実は非常に負荷の高い作業です。
字を書くとき、脳の中では同時に、
-
何を書くかを考える
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言葉や文章を選ぶ
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文字の形やバランスを整える
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書くスピードを調整する
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注意を保ち続ける
といった複数の処理が行われています。
特に重要な役割を果たすのが「前頭前野」と呼ばれる脳の部位です。
前頭前野は、注意の持続、衝動の抑制、行動のコントロールなどを担っています。
つまり、
字を丁寧に書く=高い集中力と自己コントロールが必要
ということなのです。
「意識すれば書ける」という事実が意味するもの
ここでとても大切なのが、
**「意識すれば、きれいに書ける」**という点です。
これは、
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字の形を理解している
-
手先の運動能力がある
-
正しく書く力を持っている
という、明確な証拠です。
つまり、
「できない」のではなく、
常にそのモードを使っていないだけなのです。
人間の脳は非常にエネルギーを消費するため、
「今はそこまで丁寧にしなくていい」と判断すると、
自然と省エネモードに入ります。
その結果、
「読めればいい」
「内容が伝われば十分」
と判断し、字の丁寧さが後回しになります。
これはサボりではなく、
脳の自然な働きです。
「面倒くさい」は、やる気がないという意味ではありません
子どもが口にする
「ちゃんと書くのが面倒くさい」
という言葉も、誤解されやすいポイントです。
脳科学的に見ると、この言葉は、
-
注意を保ち続けるのが大変
-
書く内容を考えることで精一杯
-
これ以上エネルギーを使う余裕がない
という状態を、正直に表しています。
特に、
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考える力が強い子
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注意の切り替えが苦手な子
-
ワーキングメモリが小さめな子
ほど、「字まで気を配る余力が残っていない」ことが多いのです。
叱るよりも、「切り分ける」関わりが大切です
字が雑なときに、
「もっと丁寧に書きなさい」
「気をつけなさい」
と繰り返してしまうと、子どもは緊張し、前頭前野にさらに負荷がかかります。
その結果、
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書くこと自体が嫌になる
-
学習への抵抗感が強くなる
-
自己否定につながる
といった悪循環が生まれやすくなります。
脳科学的に有効なのは、次のような関わり方です。
-
「いつ丁寧に書くか」を場面で決める
-
字の丁寧さと内容理解を分けて評価する
-
「必要なときに切り替えられている」ことを認める
常に100%を求めるのではなく、
使い分ける力を育てることが、将来の学力につながります。
字が雑なことより、大切なサイン
意識すればきれいに書ける。
必要な場面では切り替えられる。
これはむしろ、
学びの土台が育ちつつあるサインです。
私たち Sprouts(スプラウツ) では、
小金井市を中心に、不登校や学習に不安を抱えるお子さん一人ひとりの
「脳の使い方」と「学びのペース」に寄り添った支援を行っています。
字の問題も、学習のつまずきも、
責める対象ではなく、理解し、整えていく対象です。
🌱
by Dr. Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所 代表理事/聡生館&Sprouts フリースクール代表)
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